【2通目】強羅の案内人


3月の中旬、後輩の大学合格祝いに行った箱根日帰り旅行。

出逢った方に星の王子さまミュージアムで購入したレターセットで手紙を書いた。
ただ今回は住所が特定できなかったため、
なんと宛名に地図を書いて送ってしまったという…!(笑)





”次は強羅駅〜強羅駅〜”
バスの中にどこかで聞いたことのあるような声のアナウンスが響く。
もうすぐバスが終着地に着くようだ。

私たちは特に予定を決めていなかった。
友人の大学合格祝いでやってきた箱根旅行。
2人とも一眼カメラを首に下げ、朝からパシャパシャと写真を撮りまくっていた。

「せっかく箱根来たし、温泉でも入ってく?」


バスは強羅駅の目の前に停車した。
インターネットで「強羅 温泉」と調べるも、
なかなかピンと来る検索結果が出てこない。
私たちは潔く自力で探し出すことを諦め、駅近くの案内所へ向かった。


案内所に着くと、1人の女性スタッフが外に置かれたパンフレットを整理していた。
「すみません、温泉を探してるんですが…」

声をかけると彼女はすぐに振り向いた。
「あら友達?とびっきりのにごり湯紹介してあげるわよ!」
そう言って、彼女は駅から歩ける距離にある温泉を紹介してくれた。
「旅館の人に電話しとくわね。あと、温泉出たら強羅公園見てくると良いから。」


駅から温泉まではひたすら坂道。
首に下げたカメラの重力が容赦な運動不足の身体を地面に引っ張るのを感じた。

ようやく温泉の看板が見えたのは、歩き始めてから15分ほどたった頃。
後ろを振り返ると小さな子供なら転がっていってしまいそうな程の急な坂道が
はるか下まで続いていた。


温泉は私たちの貸し切り状態。
おかげでゆっくりと湯に浸かることが出来た。
全てはあのスタッフさんのおかげだ。
公園を一周し終えた私たちは、電車に乗る前にもう一度案内所に寄ることにした。


私たちの姿を見ると彼女はニコリと微笑んだ。
「温泉入れた?今日は泊まるの?」
「いえ、このままま箱根湯本へ帰ります。」
「あらそうなの…」

そのまま、私たちは少しだけ話をした。


「じゃぁ、本当にありがとうございました!」
帰り際、私たちはもう一度頭を下げた。
すると彼女は急にどこからか2つの袋を取り出し、
「これ持っていきなさい」と私たちにそれを差し出した。

「え、ありがとうございます…!!」
袋の中にはそれぞれ深紅のバラと色とりどりの花々のドライフラワーが入っていた。

「気をつけてね」


その後、私たちはジャンケンをした。
今、私の家には深紅のバラのドライフラワーがひっそりと飾られている。



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